業界レポート例
建設・空調設備業界におけるDX推進レポート
1. 業界概要
前提知識
建設・空調設備業界は、建築物や施設内の快適な環境を維持するための設備の設計、施工、保守を行う産業です。この業界は、建築物の機能性と快適性を高める重要な役割を担っています。
最近の業界動向
建設・空調設備業界では、環境配慮と技術革新が進んでいます。
- 省エネ技術の導入拡大
- IoTやAIを活用したスマート空調システムの普及
- 地球温暖化対策としての高効率空調設備の需要増加
業界の主要な課題
建設・空調設備業界では、以下の課題が顕在化しています。
- 熟練技術者の不足と技能継承の問題
- 施工現場における作業効率と安全性の向上
- エネルギー効率と環境負荷低減の両立
2. 業務プロセス分析
建設の空調設備における主要業務は以下であると予想されます。 各工程が連携し、効率的な空調設備の設計・施工・運用を実現しています。デジタル化によって、さらなる効率化と品質向上が期待されます。
設計 | 積算 | 資材調達 | 施工計画 | 現場施工 | 品質管理 | 試運転調整 | 完成検査 | 引き渡し | 保守点検 | アフターサービス | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
この工程の目的 | 要件に基づく設計 | コスト算出 | 必要資材の確保 | 工程計画立案 | 実際の設置作業 | 品質確保 | 動作確認 | 基準適合確認 | 顧客への引渡し | 定期的な点検 | 顧客サポート |
主要な作業 | CAD設計 | 見積作成 | 発注・納期管理 | スケジュール作成 | 配管・配線 | 検査・記録 | パラメータ調整 | 性能テスト | 説明・書類作成 | 定期点検 | 修理・相談対応 |
3. よくある課題
建設における空調設備のよくある課題は以下であると予想されます。 収集済みの情報と組み合わせて確認しましょう。 以下の情報は外部要因(外部企業、競合、業界動向)における課題です。ヒアリング時には、内部要因(自部門や自社)における情報を収集できると精度が上がります。
- 技術者不足
- 熟練技術者の高齢化と若手技術者の確保難
- 設計ミス
- 複雑化する設備要件に対応しきれない設計ミスの発生
- 工期遅延
- 予期せぬ問題発生による工期の遅れと対応の遅れ
- コスト管理
- 資材価格の変動や労務費の上昇によるコスト管理の困難さ
- エネルギー効率
- 省エネ基準の厳格化に対応した高効率システムの開発と導入
- 施工品質
- 現場での施工品質のばらつきと管理の難しさ
- メンテナンス効率
- 設備の老朽化に伴う保守点検の効率低下
- 環境対応
- 環境規制強化に伴う新技術導入の必要性
- データ活用
- 蓄積されたデータの有効活用不足
- 顧客ニーズ変化
- 多様化する顧客ニーズへの迅速な対応
4. ありたい姿
建設の空調設備におけるありたい姿は以下であると予想されます。 DX推進状況に応じて検討しましょう。DX2.0のありたい姿を定めてそこから逆算してアクションを検討する方法に加えて、DX取り組み状況がまだ始まったばかりの場合はDX1.0としてペーパーレスから検討することもお勧めします。
タイトル | 解決する課題 | 解決されたあとの状態 | DXレベル(参考程度) |
---|---|---|---|
ペーパーレス現場管理 | 紙ベースの非効率な管理 | デジタル化された現場情報の即時共有と管理 | DX1.0 |
IoTセンサーによる遠隔監視 | メンテナンス効率 | リアルタイムでの設備状態把握と予防保全の実現 | DX1.5 |
AI設計支援システム | 設計ミス | 高精度で効率的な設計プロセスの確立 | DX1.5 |
デジタルツイン活用 | 施工品質、工期遅延 | 仮想空間での施工シミュレーションによる問題の事前解決 | DX2.0 |
顧客データ統合プラットフォーム | 顧客ニーズ変化 | パーソナライズされたサービス提供と新規ビジネスモデルの創出 | DX2.0 |
5. DXソリューション
関連するDXソリューションの例を以下に挙げます。 これらのソリューションは、建設・空調設備業界の課題解決と効率化を支援し、業界全体のデジタル化を促進します。各企業の状況に応じて適切なソリューションを選択し、段階的に導入することが重要です。
タイトル | 説明 | 期待効果 | DXレベル(参考程度) |
---|---|---|---|
モバイル現場管理アプリ | スマートデバイスを使用した現場情報の記録・共有システム | 情報共有の迅速化、ペーパーレス化 | DX1.0 |
BIM/CIMシステム | 3Dモデルを活用した建築・設備の統合設計・管理ツール | 設計品質向上、施工効率化 | DX1.5 |
AIを活用した需要予測システム | 過去データと外部要因を分析し、将来の需要を予測 | 適切な人員配置、資材調達の最適化 | DX1.5 |
VR/AR技術を用いた施工支援 | 仮想空間での作業訓練や現場での拡張現実ガイダンス | 技術継承、作業効率向上 | DX2.0 |
ブロックチェーン契約管理 | 分散型台帳技術を用いた契約プロセスの自動化・透明化 | 取引の信頼性向上、業務効率化 | DX2.0 |
補足
用語集
- BIM (Building Information Modeling)
- 建築物の3Dモデルを作成し、設計から施工、維持管理までを一元管理するシステム
- IoT (Internet of Things)
- 様々な機器をインターネットに接続し、データ収集や遠隔制御を行う技術
- デジタルツイン
- 現実世界の物理的な対象をデジタル空間に再現し、シミュレーションや分析を行う技術
- VR (Virtual Reality)
- コンピュータで作られた仮想空間を体験できる技術
- AR (Augmented Reality)
- 現実の風景にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術
DXレベルとは
革新的なDXの前には、デジタイゼーションと呼ばれるデータ収集やペーパレス化が必要である。DXには大きく3つのステップがあります。
- DX1.0 : 特定業務のIT化を図る段階。具体的には、ペーパーレスやモバイルワークが挙げられる。
- DX1.5 : 全社のIT化・IoT化のフェーズ。工程全体をIoTで「見える化」し、データプラットフォームを構築する段階。
- DX2.0 : 集積したデータとナレッジを利活用して、外販できる新規事業の創出、ひいてはビジネスモデルそのものの変革が可能となる状態。