業界レポート例

ホーム レポート一覧 自治体×公共インフラ管理
自治体×公共インフラ管理

自治体と公共インフラ管理のDX推進レポート

1. 業界概要

前提知識

自治体および公共インフラ管理とは、地方公共団体が管理する道路、橋梁、上下水道、公共施設などのインフラを効率的に維持・管理する業務を指します。この分野では、安全性の確保、長寿命化、コスト削減が重要な課題となっています。

最近の業界動向

公共インフラ管理の分野では、老朽化対策や効率化に向けた取り組みが進んでいます。

  • ICTやIoT技術を活用したインフラ監視システムの導入
  • AI・ビッグデータ解析による予防保全の実施
  • ドローンやロボット技術を用いた点検作業の自動化

業界の主要な課題

公共インフラ管理における主要な課題は、以下の3点に集約されます。

  • インフラの老朽化と維持管理費の増大
  • 熟練技術者の不足と技術継承の困難さ
  • 災害リスクの増大と迅速な対応の必要性

2. 業務プロセス分析

自治体の公共インフラ管理における主要業務は以下であると予想されます。 各工程は、インフラの計画から廃棄までのライフサイクル全体をカバーしており、効率的な管理と運用が求められています。

計画立案 設計 建設 点検 診断 修繕・更新計画 修繕・更新実施 維持管理 データ管理 予算管理 廃棄・撤去
この工程の目的 インフラ整備の長期計画策定 具体的な設計図面作成 インフラの新規建設 定期的な状態確認 点検結果の分析と評価 修繕・更新の優先順位決定 実際の修繕・更新作業 日常的な保守管理 インフラ情報の一元管理 予算の適切な配分と執行 老朽化インフラの安全な撤去
主要な作業 ニーズ調査、将来予測 構造計算、図面作成 施工管理、品質管理 目視・機器による点検 劣化度判定、リスク評価 優先順位付け、計画策定 工事発注、施工監理 清掃、小規模修繕 データベース構築・更新 予算編成、執行管理 解体計画、環境配慮

3. よくある課題

自治体における公共インフラ管理のよくある課題は以下であると予想されます。 収集済みの情報と組み合わせて確認しましょう。 以下の情報は外部要因(外部企業、競合、業界動向)における課題です。ヒアリング時には、内部要因(自部門や自社)における情報を収集できると精度が上がります。

  • インフラの老朽化対策
    • 高度経済成長期に集中整備されたインフラの一斉老朽化への対応
  • 予算制約下での効率的な維持管理
    • 限られた予算内での優先順位付けと効果的な資源配分
  • 技術者の高齢化と人材不足
    • ベテラン技術者の退職に伴う技術・知識の継承問題
  • データの分散管理と活用の困難さ
    • 各部署で個別に管理されているデータの統合と有効活用
  • 災害時の迅速な対応と復旧
    • 大規模災害時のインフラ被害状況の把握と迅速な復旧作業
  • 新技術導入の遅れ
    • ICT、IoT、AIなどの先端技術の導入と活用の遅れ
  • 住民ニーズの多様化への対応
    • 変化する地域社会のニーズに合わせたインフラ整備・管理
  • 環境負荷の低減
    • インフラ整備・管理における環境配慮と持続可能性の確保
  • 広域連携の不足
    • 自治体間での情報共有や共同管理体制の構築の遅れ
  • 長期的視点での計画立案の困難さ
    • 短期的な課題対応に追われ、中長期的な戦略策定が不十分

4. ありたい姿

自治体の公共インフラ管理におけるありたい姿は以下であると予想されます。 DX推進状況に応じて検討しましょう。DX2.0のありたい姿を定めてそこから逆算してアクションを検討する方法に加えて、DX取り組み状況がまだ始まったばかりの場合はDX1.0としてペーパーレスから検討することもお勧めです。

タイトル 解決する課題 解決されたあとの状態 DXレベル(参考程度)
ペーパーレス化とデータの一元管理 データの分散管理と活用の困難さ 全てのインフラ情報がデジタル化され、一元管理されている DX1.0
IoTセンサーによる常時監視体制 インフラの老朽化対策、災害時の迅速な対応と復旧 リアルタイムでインフラの状態が把握でき、異常の早期発見が可能 DX1.5
AI診断による予防保全の実現 予算制約下での効率的な維持管理、技術者の高齢化と人材不足 AIが点検データを分析し、最適な修繕計画を自動で策定 DX1.5
VR/ARを活用した技術継承システム 技術者の高齢化と人材不足 ベテラン技術者の知識・経験がデジタル化され、若手技術者が効率的に学習可能 DX2.0
住民参加型のインフラ管理プラットフォーム 住民ニーズの多様化への対応、広域連携の不足 住民がスマートフォンアプリで情報提供や要望を発信し、自治体間で情報共有できる DX2.0

5. DXソリューション

関連するDXソリューションの例を以下に挙げます。 これらのソリューションは、公共インフラ管理の効率化と高度化を実現し、自治体の課題解決に貢献することが期待されます。各ソリューションの導入には、段階的なアプローチと十分な検討が必要です。

タイトル 説明 期待効果 DXレベル(参考程度)
クラウド型インフラ管理システム インフラデータをクラウド上で一元管理し、関係者間で共有するシステム 情報の一元化、業務効率の向上、ペーパーレス化 DX1.0
IoTセンサーネットワーク インフラに各種センサーを設置し、常時監視を行うシステム リアルタイムモニタリング、異常の早期発見、予防保全の実現 DX1.5
AI点検診断システム 画像認識AIを用いて、インフラの点検データを自動分析し、劣化度を診断するシステム 点検作業の効率化、診断精度の向上、人材不足の解消 DX1.5
VR/AR技術継承システム ベテラン技術者の知識・経験をVR/AR技術で再現し、若手技術者の教育に活用するシステム 技術継承の効率化、人材育成の促進、技術力の維持向上 DX2.0
市民協働型インフラ管理アプリ 住民がスマートフォンアプリを通じてインフラの不具合を報告し、自治体と情報共有できるプラットフォーム 住民参加の促進、迅速な問題把握、自治体の業務効率化 DX2.0

補足

用語集

  • IoT (Internet of Things)
    • モノがインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み
  • AI (Artificial Intelligence)
    • 人工知能。人間の知的能力をコンピュータ上で実現する技術
  • VR (Virtual Reality)
    • コンピュータ上に人工的な環境を作り出し、あたかもそこにいるかのような体験ができる技術
  • AR (Augmented Reality)
    • 現実の環境にコンピュータを用いて情報を付加する技術

DXレベルとは

革新的なDXの前には、デジタイゼーションと呼ばれるデータ収集やペーパレス化が必要である。DXには大きく3つのステップがあります。

  • DX1.0 : 特定業務のIT化を図る段階。具体的には、ペーパーレスやモバイルワークが挙げられる。
  • DX1.5 : 全社のIT化・IoT化のフェーズ。工程全体をIoTで「見える化」し、データプラットフォームを構築する段階。
  • DX2.0 : 集積したデータとナレッジを利活用して、外販できる新規事業の創出、ひいてはビジネスモデルそのものの変革が可能となる状態。